リスニングが発見されるまで
語学のレベルを計るための指標は四つの技能①リーディング・②ライティング・③リスニング・④スピーキングが均等にできることが理想とされています。ただ受験に向けての勉強ではリスニングを後回しにする人が多いのではないでしょうか。というのも文法や読解力、ある程度の単語力がなくては何かについての英語の話を聞いても、それは単なる音の羅列、日本語ではない言葉をしゃべる声としか聞こえません。"How are you?" という言葉が聞き取れるのも、私たちが子供の頃にどこかでこの言葉の音と意味を知ったからです。同様に単語のストックがなくて、文法も分からない人が話そうとしても無理な話です。
以前は「中学・高校で英語を6年間やったのに話すことができない!」と声高に叫ぶ人がいました。しかし、もともと外国語の勉強とは西欧の伝統的なギリシャ・ラテン語の勉強に見るように、それは読み書きを中心としたものでした。日本における英語教育も読み書きが中心でした。そして日本のほとんどの英語の教科書は優れたもので、特にリーデイングや文法ではかなりの効果を上げてきました。近年「6年も英語をやったのに...」云々という声はあまり耳にしなくなりました。どうしてでしょうか?
英語はこのグローバルな時代になって、外国の人との交流の機会が増えたり、ビジネスでの会話力が以前とは比べ物にならない程、必要とされるようになり、学校での英語教育が会話寄りにシフトしたからです。しばらくスピーキングに注視したものの、やがて私たちは会話にはリスニングも重要であることに気づきました。
会話とはお互いの意思の疎通を図るものであり、自分のことだけを「話して」いては会話は成り立ちません。母語の日本語で私たちは日常生活の中で意識せずにやっているのですが、外国語でも、相手の言うことも聞いて、それに反応して言葉を返すことが会話なのだと私たちは分かってきたのです。会話用の文を暗記しただけではダメだ、相手の話を聞き取れなければならない。ということで、近年では授業でリスニングも重視されるようになりました。
リスニングとスピーキング、どっちから?
相手の言うことが聞き取れれば、今度はその表現を自分で別の場面でも使って見る。このようにしてリスニングとスピーキングはワンセットで学習すべきものとなりました。でも先ずはリスニング力を充実させたいものです。そうすればスピーキング力がそれに付いてきます。上述したように、リスニングの力を向上させるためには、ある程度の単語のストックと文法力が必要です。その上で自分の現在の力に合ったリスニング教材を選びます。
リスニング教材には以下のようなものがあります。
- 英検やTOEICの本のリスニングのパートの音源
- NHKの語学講座
- CDやDVD
- ネットのポッドキャスト
- YouTube
リスニングの具体的な勉強法
ではどのような方法でリスニングの勉強を進めていくのがいいのでしょうか?
どの方法もスクリプトがある音源を用意します。
効果的な方法としてよく言われるものにリピーティングがあります。これは文字通りネイティブの読む文をすぐ後で、イントネーションも出来るだけ真似をしながら繰り返す方法で、比較的やりやすい方法です。
他に非常に効果的だと言われているものにシャドウイングがあります。これはネイティブの声に数秒遅れながら、後を付いていくものですが、ネイティブの声を聞きながら、同時にネイティブのイントネーションを出来るだけ真似して発声するという、アクロバティックな方法です。自分の声が邪魔になって聞き取るのが大変で、かなり体力を使うやり方です。中級以上の英語力の人でないと難しいと思います。
私は次のようなやり方でリスニングをしています。
- スクリプトのある音源/映像を用意する。
- スクリプトを見ないで教材を何回か聞く。
-
ここが一番大事→ 手元のスクリプトを何回か書き写す。
あるいは映画やドラマのDVDを使い、英語字幕に設定して見る。数回音だけを聴いた後で、その字幕を紙に書いていき、意味がわからない単語や表現を辞書等を用いて調べる。次にノートに手書きで清書するか、ワープロに打ち込んでスクリプトを完成させる。この最低でも2回書くということが非常に効果的。 - 繰り返し音源/映像に触れる。1日5分でもいいので、必ず毎日やる。
- 一つのリスニングが7〜8割できたら、飽きが出てくるので、他の音源にも挑戦してみてリスニングの幅を広げ、相乗効果を狙う。
何回も同じ音源/映像を聴いたり、観たりすることはよく推奨されていますが、ここに<手でスクリプトを書く>というワンステップを入れてみて下さい。ブログ「英文音読が英語力アップに効く理由」「10分で出来る英単語の覚え方」で書いたのですが、手を使って書く、発声をして、自分の声を耳で聞く、すなわち「五感」を使って勉強することと連動しています。
五感を駆使して、英語の世界に触れているということは、日本語の世界に毎日浸っている私たちの生活のどこかに、わずかな亀裂を入れて、英語世界のかけらを呼び込むことです。これが語学上達の秘訣です。ぜひ挑戦してみて下さい。
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